行者にんにくの
行者にんにくを育てよう
プランター栽培の場合
プランターの準備
2条植え、株間10cm確保で、1鉢に10~12本。20本なら2鉢が目安です。
用土
市販の野菜用培養土を使用するのが最も簡単です。
自作する場合、黒土と腐葉土を1:1+油粕を少々加え、よく混ぜ合わせます。
1~2年経過で用土を更新します。
植付
苗の植付方法は地植えの場合と同じです。
置き場所
日陰になる涼しい場所に置きます。
日なたに置く場合、南側に日よけになる物を置き、乾燥しないよう潅水管理します。できれば夏は涼しい場所に移動させます。
植付後のお手入れ
基本、地植えの場合と同じで、油かす、または化成肥料をまめに追肥します。
植付後のお手入れ
行者にんにく栽培の要点
- 日陰地に植えること
- 乾燥しすぎないよう様子を見て潅水すること
- 肥料を多めに与えること(特に元肥)
定植初年度の注意点
5月に定植すると、6月には地上部(葉)が枯れますが、翌年の春には再び元気な葉を出しますのでご安心ください。
また、初年度は花蕾が付いたら摘んでしまったほうが良いです。これは根を弱らせないためです。
元肥と追肥
地植えの場合、最初に投入する完熟堆肥は多い方が良いです(1㎡あたり5~10リットル)。
植付以降は油かす、または化成肥料を1~2ヶ月ごと、少量づつ追肥します。
施肥量を増やすと萌芽が早まり、黄変期が遅くなることで生育期間が伸びます。
株分け
年月を経ると親株の脇に新芽が出て、1株が3~4つに分げつします。
4年生以上の株は春に植えて秋には分株可能です。
株が混みあってきたら、葉枯れ期の後、秋に植え替えをします。
葉枯れ期と自家採種について
葉枯れ期
7~8月には葉が枯れます。また移植した年は6月に葉が枯れます。いずれも翌年春には再び元気な葉を出します。
採種
播種からおよそ4年経過するととう立ち、花が咲き、7月頃に採種できます。
種蒔きからの育成
種蒔き時期
お盆~10月上旬まで。秋蒔きで地中で発芽準備、越冬し、春に発芽というサイクルです。
発芽条件はおよそ20℃で40日間。関東で5月頃が目安です。
種蒔きの方法
以下の手順で育苗箱を作ります。
- 発砲スチロールの箱(とろ箱)の底に排水のための小さな穴を空けます
- 箱の底に赤玉土を3cm敷きます。これで排水性・保水性を確保します。
- その上に完熟牛糞堆肥を2cm敷き、さらに上に化成肥料を適量撒きます。
- その上に野菜用培養土(種まきの土など)を2cm敷きます。
- 上記と同じ堆肥~培養土の層をもう1段敷き、その上に行者にんにくの種を蒔きます。60cm四方の箱に20g程度が目安です。
- 培養土を3cm敷いて手のひらでよく鎮圧します。
- 防寒のためのもみ殻(または敷き藁)を2cm、箱の上に寒冷紗を被せて完成です。
種蒔き後のお世話
- 2月下旬になったらもみ殻(敷き藁)だけを取り除きます。
- 気温20℃で40日経過後、早くて3月、遅くて5月が発芽の目安です。
- 蒔き床の上にダイオシートで日除けと乾燥防止の覆いをします。
その後、長い幼苗期を経て、発芽から3年程経過した青年期の苗を地植えに移行する、というサイクルです。
暖地での栽培(遮光ネット張り)
パイプを組んで簡単な屋根を付けます。
- 高さ:70cm~1m、幅:1m、長さ:栽培本数に応じて延長します。
- 腐食防止のタールを塗った板を天井につけます。
- ダイオシート(遮光ネット)を被せて飛ばないように固定します。
家庭菜園など少規模栽培では小さな遮光ネットを利用し、畳1枚の広さでも50本ほど栽培可能です。
遮光設備は行者にんにくだけでなく、茗荷やフキの栽培にも応用できます。
生育が悪い時の対処法
葉に元気がない
- 【原因】
- 乾燥、または過湿による根痛み
- 【対策】
- りん茎を掘り出し、表皮が固くしっかりしていればまだ生きています。前述の植え場所の選定、土づくりを参考に植付し直します。移植後は堆肥を水で溶いたものを与えると即効性があります。また潅水の頻度を見直します。
春になっても葉が出ない
- 【原因】
- 肥料、水切れによる枯れ
- 【対策】
- りん茎を掘り出し、消えてしまっている場合は上記が原因です。土づくり、追肥、潅水を見直し、再挑戦しましょう。多肥料栽培がポイントです。
行者にんにくの成長過程
1~2年目
行者にんにくは初夏に花を咲かせ、7月下旬に結実する。この種子を乾かないうちに播種すると1か月ほどで発根し始める。
播種当年はほとんど芽は地上に出ず、地下に小さな鱗茎を形成して越冬し、翌春、雪どけとともに発芽し、葉を1枚だけ伸ばす。
同1年内に新葉は1枚だけ展開し、葉数は増加しない。
3年目
3年目で葉数が2枚になり、草丈は14cm程度になる。しかし、それ以上葉数は増えず、秋には枯れて休眠に入る。
2~3年目以降の越冬した休眠株では、萌芽葉(鱗茎の先に少し発芽した状態)が本葉の前に出葉する。
4~5年目
4年目で草丈は30cm程度になる。
年を経るごとに葉数は徐々に増加し、4年目で1~3葉となる。
葉の食用
葉が3枚以上出るまでに成長したら、中央の若い葉1枚を残し、外側2枚の葉を収穫し、食用にできる。
成株
成熟株の葉数は3~4枚。草丈も35cm程度にまで大きくなる。
成長量は草丈ばかりでなく鱗茎の太さ、葉の面積とも顕著に大きくなる。成株では地下に肥大した鱗茎が存在し、外側は旧葉の葉鞘基部が網目状に残ったもので包まれる。
また、抽台する株がみられ、葉と茎の付け根から花茎が伸び、先端に白い小花からなる花球ができる。
鱗茎の食用
実生株の生育の良いものは5年目から地下の鱗茎を食用に収穫できるようになるが、自然条件下ではさらに2~3年長くかかる。
一般のネギ属植物に比べ、行者にんにくは長い生長期間を要する。
参考文献:新特産シリーズ「ギョウジャニンニク」井芹靖彦著